『雨宿り』

隠し味には 薄塩の
醤油を あっさり 滲みこませ
大根 煮詰める 暗がりで
魚を おろして 火にかける
五月雨に 雨宿り
千鳥足 常連の客
雨上がり 花が散る 傘をささずに
あなた…家路に帰る
窓に朝日も 漏れ出して
紙ひるがえる 日めくりの
ありし日のカレンダー 千切り捨て

戸口に風鈴 傘立ての
差さったまんまの 忘れもの
ふた月経つのよ 蝉しぐれ
忙しいだなんて 置き去りで
浅き夢 雲隠れ
夕暮れて 満天の星
うら悲しい 暗がりに 綺羅の織姫
彼方…闇に消える
眠れなくても もう一度
白々明ける 夜を待って
あなたの声だけ 聞きたいの

走り書き 迷いこむ 風の便り 葉書郵便
裏返し あなたの字 涙払えぬ
宛名…滲む文字の
枝垂れ桜の 萌ゆる頃
国元帰る つもりだと
あなたが恋しい 雨宿り