『人斬り修羅道』
影もかたち漏らさぬ完璧な死角
奴の老いた背に狙いつける
一命 露と散らさん隠密
斬れと沙汰した主のため
間髪のあいだに 隙を突いた
枯葉踏む裾 得物を構え立つ
問わざる其の目 虚ろなるまま
在りし日の夢 胡蝶とならんや
肌艶も乾いた 細い首に
刺す刃は孤高か
柄を見る今際のまなこ
敢え無い人斬り修羅道
浴びる血を 払う
哀しみなどこの身が果てるまで
殺すと決めた飽けもせぬ旅路
己を焦がす炎と
詰める腹も持たぬ一匹狼
八つの幼い童子だったとき
寄る辺も尽きて日々に擦り切れて
足掻こうとも誰も素通り
一介の望みすでに散った
欲しかったのは抱きしめる広い胸
怯えつつ宵の闇に惑い行く
振り向きもせぬわずかな影
今にも倒れると冷えた爪先
震える子にもあの世は
暖かいのだろうか
荒地を這いずる 素足は
雪の降る場末で
構わないならこの身体うち捨てて
空を翔ける燕のごとくに
静かな鳥になれたら
幸も知らず生き急ぎ
指さす未来さえ映らぬ瞳
誰知らぬこの地に朽ちようか
逢いたい信じる誰かに
嗚呼勇気を与えて
価値も無いとその命捨てるなら
声呼びかける温かな影に
この手を伸ばした
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