『上がり症』

ふらりふらりと膝が遊ぶが
素顔見せる上がり症
会議室の真ん中 昼下がり
勇気を出して言えよ 使命を帯びた部長の
やけっぱちに睨んだ深刻な顔

度々と尋ねてみた どこまで赤字かと
いつになれば黒字なのかと
その度に応えた 黒字などはないさ
終ってるからこの会社は

すこし気になる部下 見送ったのはちょっと前で
ここに未だ還らない金が奪われたと気づいたのは
今更になってだった

あなたは逃げたそれだけでよかった
未来に光が差した
夢を語るだけでよかったのに
叶えたいと願ってしまった
人生が表情を変えた
身が果てるとも夢追うことにした

部長がたったひとひらの札束にこもる
意地をついに見ることはない
そう それはすでに
部下だった男がばらまいていると思う

もうこれも覚悟だがなんてひどいストライキだろう
繰り言も言い訳も出来ずに
ただひとり矢表に立っているだけなのだから

社長がお望みならば この身など
いつでも引き換えにして
降り注ぐ責任かぶってやろう
ただあとに一握り残った僕の部下たち
すくいあげて会社の隅に置いて

あなたは逃げたそれだけがよかった
未来に希望が満ちた
夢叶えるだけがすべてだった
愛してると思うこと
願いが人生を変えた
夢果たせよ僕は胸に思う

あがきはしない上がり症
揺らがぬまなざしの向こう
近づけさせはできない信念
罪償わせてください
みずから辞表を書くから
僕の肩書きを剥ぎ取ってくれ